生のカカオに想いを馳せながら、カカオ豆をカカオニブにした。

スーパーでも、コンビニエンスストアでも安価で買えてしまうチョコレート。その一方で、カカオの農園からチョコレートにするまでこだわったチョコレートも人気を集めつつある。いわゆるサードウェーブ系のbean to bar(ビーン・トゥー・バー)。

お菓子づくりをする者としては、原材料から選びこだわるのがポリシーであり、チョコレートを使うのなら生産者の顔を知った上で使いたいと思っている。とはいえまだカカオ豆を仕入れるまでには至らず、ボンボンショコラを作るときにもすでにタブレット型や板状になったチョコレートを使うのがほとんどだ。

美しい、生カカオ。

私がはじめて生のカカオを見たのはトーゴに行ったとき。トーゴ大使館で「カカオの農園に行きたい」とお願いしたところ、トーゴ人の広報の方が現地にいる知り合いを紹介してくださり、無事に車で連れて行ってもらうことができたのだった。山の中、至る所に生えているカカオの木にテンションが上がりながら、トーゴなまりのフランス語を聞き取るのに精いっぱいだったことを思い出す。

“Regardez”(見て)という基本的な単語一つを取っても、フランスの「ホギャルデ」とトーゴの「ルギャルデ」の圧倒的なアクセントの違いにかなりはじめは戸惑っていたのが懐かしい。

カカオポッドをもぎ取り、半分に割ると、そこには白く美しいカカオパルプが顔を出す。まるでライチのような香りをした、ほどよい酸味のある、ヌメヌメとしたフルーツ。果肉は少ないが、強い日差しのもとで食べる(なめる)、甘みのあるカカオはたまらなかった。

トーゴではKomi Agbokouさんが、CHOCOTOGOというローカルチョコレートファクトリーを設立してから、輸出のためのカカオだけではなくローカルでもチョコレートが買えるようになった。実際、ガスステーションでも、小さなローカルマーケットでも、CHOCOTOGOのチョコレートを見かけた。常時気温が30℃くらいのトーゴ(ロメ)でも解けないチョコレートを作っていて、砂糖とカカオのシンプルな香りが楽しめる。

チョコレートの生産現場の見学は滞在期間が足りずに断念したが、メールをしたら「見学はウェルカムよ~」と返事をくれたから、次回トーゴに行く時のバケットリストに入れてある。

道端でフルーツを売っていて、そこにはカカオも並んでる。(一番右の黄色いものがカカオ)

カカオニブに加工。

さて、ここからが本題。

チョコレートになるまでを簡単におさらいすると、まずカカオ豆をパルプごと発酵させ、乾燥させる。この状態で出荷されて、それを焙煎し、殻とカカオニブに分ける。カカオニブを細かくすりつぶして液体状にし、そこに砂糖などを加えて加工したのがチョコレート、という感じ。

今回は、カカオ豆からカカオニブにして、それを使っていくつかのお菓子を作った。カカオ豆は、知り合いの尊敬するチョコレート屋さんが自ら農園を訪れて仕入れているベトナムはDak Lacの豆をいただいたもの。

チョコレートにしなかったのは、香り高いカカオニブに砂糖を混ぜたくなかったから。苦みが少なく、酸味と香ばしさの感じられるカカオニブの可能性を、いろいろ試してみたくなってしまって。

ローストする前はこんな感じ。チョコレートのような香りはせず、発酵の酸っぱい匂いがする。臭いという人もいるかもしれないが、発酵好きにはたまらない。

ロースト後。120度でとりあえず30分、そのあと割れなかったものだけ10分追加してみた。少し黒くなって、こうばしい香りが漂う。この時点で、もう発酵の独特なにおいは消え、すっかりチョコレートの原形感を醸し出している。

周りの殻の部分と中を分ける。これを手でやるのは結構時間がかかる。でもカカオのいい香りが家に充満して、幸せな気分になる。意味もなく幸福な時間とはこのことだろうか。

殻をむいたらこんな感じ。黒くて、なんだか見た目はデーツみたい。だけど香りはチョコレート。案外もろくて、手で簡単に割れる。これでカカオニブの完成。

このまま食べるのも最高で、スムージーのトッピングにのせるのが大好きな食べ方。あとはハード系のパンにささっとココナッツオイルとはちみつを混ぜたものをぬって、その上にパラパラとのせるのも好き。

ニブを使ってお菓子をつくる

いただいたカカオ豆は程よい酸味と苦味が感じられるもので、その可能性をどうやったら引き出せるのか、考えながらいくつかお菓子を作ってみた。

1.バナナケーキ

バナナケーキは、私自身未だに自分の納得するレシピには到達していないものの、まだ完成形を生みだせていないことにワクワク感を覚えながら、時々焼くというそんな存在。

そのバナナケーキについ入れてしまうのがカカオニブ。軽めのバナナケーキにはチョコレートは入れたくない、でも味を締めたい、というわがままに応えてくれる。カリッとした食感がまた、プレーンなバナナケーキに食感の楽しみを与えてくれる。

今回のバナナケーキはバターを使って作った。いつもはわき役のニブも、今回は半分主役だから、上にも惜しみなくパラパラと。バナナケーキの食べ方は、温めて、常温で、冷やして…とこれまたバリエーションが豊富だが、今回のケーキは冷やして食べるのがおいしいケーキになった。もちろん、そこは食べる人の好みなのだけれど。

バナナが好きな父に食べてほしい、そんなケーキになったかしら。

2.ビスコッティ・クッキー

カカオニブは、ビスコッティやクッキーに入れるのも気に入っている。ニブの香ばしい香りが、味にまとまりをもたらし、大人な雰囲気を加えてくれる。

これは友人に贈るクッキーアソートをつくった時の写真。一番上のクッキーが、カカオを使ったもの。この時は太白胡麻油をつかって、甘味はメープルシロップで。カカオとチョコレートを両方加えるっていうのも一つの方法。

3.アクセントに

カカオニブのカリッとした食感と、香ばしい香りは、どんなお菓子にも合うと感じている。なんだか物足りないな、と思ったとき、トッピングに使ったり、中に混ぜ込んでみたりすると、驚くほどバランスが取れたりする。

チョコレートになる前の、発酵の段階やロースティングの段階に容易に想いをはせることのできるカカオニブだから、お菓子にしても、そのまま食べても、楽しいんだなあ、なんて思ったりして。

これからもカカオのいろいろな可能性を引き出せるお菓子を試作したいなあ、と思う私でした。

それでは、また。

トーゴの料理について以前書いた記事があるのでよろしければこちらも。

2020-11-16|タグ:
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