まるでふかふかのベッドから顔を出すかのように、アスパラガスは旬の時期を迎えていた。
畝幅100㎝程、畝高15㎝程の畝が1ハウスに4つ並べられ、中央にはスプリンクラーで水やりできるようになっている。肥えた土であるということは、団粒構造になっている土からも一目瞭然で、「水はけがいいようにしている」と話していた。

訪れた3月には土の上にアスパラガスの茎が出ているような状態だったが、夏になるとネットを張り、程よい太さのものを伸ばして成長させる。
それは立茎と呼ばれ、越冬させるのに必要な養分を根が蓄え、同時に次の年も美味しいアスパラガスを収穫するためだ。

見学したビニールハウスには13年目の株から生えてくるアスパラガスの姿があった。太いものもあれば細いものもあり、長さも様々。毎朝、気温が上がりすぎないうちに丁度いい長さのものを見極め、30㎝~40㎝ほどまで伸びたアスパラガスを鎌で一つ一つ収穫していくという。
一晩に20㎝ほど成長してしまうというから驚きだ。春から夏は連日休みなく収穫作業で忙しいことが伺えた。

収穫を終えたアスパラガスは選別作業へ。
穂先が開きすぎてしまっているものや曲がっているものをはじいた後、同じ長さに切られ、太さによって分けられていく。
その日に出荷しない場合は穂先を上にして立て、根本を水に漬けて冷蔵庫で保存する。その間も生きているため一晩で5㎝程伸びてしまうこともあるそうだ。

興味深いことに、アスパラガスは出荷の際、品種別の仕分けは求められない。
「グリーンアスパラガス」として出荷されてしまえば、それが「ガリバー」だろうと「ウェルカム」だろうと、また3年目の株だろうと13年目の株だろうと関係ないのだ。
品種によって多少の差があるというから、その違いを食べ比べてみるのも楽しいかもしれない。

種を植えて栽培する植物とはまた違ったアスパラガスの栽培。株を植えてから2、3年経ってからようやく収穫でき、また持続的に収穫できるようにするための肥料や土づくりは欠かせない。
美しく地面に生えているアスパラガスは13年前に植えた株から出てきているものであり、その時間の流れ、その間にかけられた労力を想像すると1本のアスパラガスがいつもより少し重く感じられるようだった。

(2023年3月9日訪問)
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