はじめてのうるし【漆芸見習記 #1】

金継ぎとは何かもよくわからぬまま、初日は言われた通り壊れた皿やコップなど計5点を持って教室に向かった。

持参した食器類を見せると先生は器一つひとつを興味深そうに見、瞬時にどのような順序で作業をしていったらいいのかを見極めた様子だった。

手持ちの壊れた素材の多くがガラスであったが、陶器のような土でできているものの方がガラスよりも漆で付きやすいという。

素材や破損状態に合わせて手法を変えていくのはかなり勉強になりそうだ。

「登場器」

まず、持ち込んだ食器類五点の写真を載せておこう。

これらの食器を直しながら金継ぎを習っていくため、今後の「登場器」となる顔ぶれだ。

漆を塗る準備

この日の作業は、ツルツルとしたガラスに漆を塗りやすくするため、接着させる部分に細かな傷をつけるところから始まった。

ルーターで弱めの強さで接着面に凹凸をつけていく。ガラスが削れていつの間にか手が細かなガラスで白くなるくらい、接着面すべてを削った。

次に漆を塗る準備として、筆や板をまず灯油で洗う。

「灯油で洗う」という表現をしたことがなく、自分の口からその言葉を発するのにまだ慣れない。漆初心者らしくいちいち先生が口にされる言葉に驚き、感動していた。

そもそも漆とは、ウルシノキの樹液から作られる天然樹脂。

漆が乾く(固まる)のは、乾性油*であるから。油絵具も同じ原理だ。

灯油を使うのは漆が硬化するのに影響がないため。一方筆を使用した後は菜種油を使う。こちらは不乾性油であり、筆についた漆が固まるのを防ぐ。(この油を間違えたら大変なことになりそうだ…笑)

乾性油(かんせいゆ、drying oil)は、空気中で徐々に酸化することにより、固化する油のことである。油は成分中のヨウ素価によって分類され、ヨウ素価が130以上の油を乾性油、100から130の油を半乾性油(semidrying oil)、100以下の油を不乾性油(nondrying oil)と言う。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

はじめのひと塗り

さあ、いよいよはじめの漆をひと塗り。

ガラスや陶磁器の金継ぎに使う漆は純度が高く、強力な「ガラス用漆」を使用するのだそう。

細い筆を使ってガラスの接着面に薄く漆を塗り、ティッシュで軽く押さえて余分な漆を取る。

塗ったか塗っていないかわからないくらいごく薄く。こんなに薄くていいのかと驚きだった。

乾く前の写真を撮る余裕がなかったが、乾いた様子がこちら。塗る前はかなり薄い茶色だが、乾くとまさに漆黒となる。

ガラスは透明なため、ガラスの厚みが厚いほど漆の色が横から見えやすい。漆は茶色みがかった色をしているためそれを隠すために金をつけることもあるのだそう。

つけてもつけなくても良いということで、私は2枚あるガラスの皿のうち、一枚のみに金を施し、もう一枚は漆のままにすることにした。どの程度出来上がりに差が出るのかお楽しみだ。

漆を薄く塗った部分に金を貼り、ガラス皿2枚の作業は終了。

後日、先生が乾き具合を確認した時に金箔があまり見えない状態になってしまったということで、銀粉を蒔いてくださった。箔よりも粉の方がくっつきやすいということもあるという。美しい。

陶器の皿も同様に漆を塗るが、こちらは灯油を加えて薄め、欠けた部分に染み込ませるように塗った。

白かった器の土が、漆で茶色に染まっているのが分かる。

「乾く」と呼ぶ…のか?

漆を塗った器は乾きやすい場所で保管してもらう。それは漆風呂や漆室(うるしむろ)と呼ばれる。

なんと、漆が乾く条件は湿度70%~80%、温度20℃~30℃くらい。

漆の性質も知らなかった私はこれさえも驚きだった。

漆はウルシオールという樹脂分が主成分で、その他に水分、ゴム質、酵素などを含む。漆が乾くというのは、成分の酵素(ラッカーゼ)が水分の中の酸素を取り込んで反応し、ウルシオールが液体から固体になっていくことである。

漆器の井助「基礎知識」

乾くという言葉は水分が蒸発するというニュアンスでしか使用したことがなかった。実際、辞書(大辞林)にも「水分・湿気がなくなる」という意味が載っている。

その意味からも、漆の場合厳密には「酵素酸化重合」や「硬化」という言葉が正しいのだろうが、それを簡潔な言葉で皆「乾く」と呼んでいるのだろう。

慣れない言葉がたくさん出てくるのが楽しくて仕方ない。

次はどんな不思議に出会えるか楽しみだ。

続く。

#漆芸見習記 とは… 
「漆・金継ぎ教室」に通い始めた筆者が、金継ぎを習得していく様を記録した連載である。出典がなく書かれている情報はその日先生に教わったこと。引用していることは疑問に思って調べた部分。知識が不十分であるため、言い回しや情報に不備があればぜひコメントでご指摘ください。

2024-02-17|タグ:
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