壊れたものを修理するような感覚が、一気に作品をつくり上げたような感覚にさせられる。
漆の色も素敵だったが、金属のキラキラとした輝きで繕われたお皿は、いよいよもう持ち主の元へ帰らんと言っているようで少々寂しい気持ちにもなった。
仕上げの工程は、金継ぎ初心者には感動的な瞬間だった。
目次
うすくひと塗り
金属粉を蒔く前に漆をひと塗り。漆を塗る前に砥石で少し研ぐ。ツルツルした表面が白っぽくなるくらいが目安。
漆を静かに塗る。できるだけ薄く、でも満遍なく。
最後に重ねる漆の色は上に蒔くものの色によって決める。
金なら朱、銀なら黒。
先生の話が面白くてよそ見していたら少しはみ出してしまった。
先生、お願いだから話しかけないでください(笑)。
集中、集中。

強制乾燥
純金粉の価格は時と共に(また社会情勢も影響してか)高騰しているという。
できるだけ金を使う量を少なくしたいと試行錯誤した結果、「強制乾燥」するといいことに気づいたそうだ。
室温20℃くらいの部屋で、湿度80%くらいのムロに入れて待つこと15分ほど。
描いた朱色はどこに消えたのかと思うくらい、いつの間にか色が落ち着いている。
漆を半乾きの状態にすることによって金属粉が沈むことなく、少ない金の量で仕上げることができる。
先生は強制乾燥させている間に違う作品に夢中になっていて、何度も乾燥させすぎてしまったことがあるそうだ。そうなると、また漆を塗らなければならない。
多様な仕上げ方
金継ぎの仕上げ方は、金や銀を蒔くだけでない。
共柄仕上げと言われる器の柄に合わせて柄を描く方法や、螺鈿を入れてキラキラさせる方法、全く新しい絵を追加してしまう方法など。
いくらでもクリエイティブになっていい。
先輩生徒さんはこんな仕上げをしている方もいた。

今回は金銀粉で仕上げたが漆の扱いに慣れてきたらより自由な仕上げにしてみたいと夢見る。
修繕後の器たち
これまで修繕の過程を断片的に記録してきたのもこれでおしまい。
完成した器の写真をここに記録してみたい。
まずは母が大切に使っていた黒い器。欠けを直した。

初めてにしては綺麗に仕上がったかしら。

次に、遠藤丘さんのマグカップ。

こちらも欠けを埋めた。実は直し始めた頃にはあまり気になっていなかったが器を観察するうちにこの欠け以外にも小さな欠けが気になるようになった。何かのついでにそれも直したいと思っている。


sghrのガラス皿2種。
こちらは断面に銀箔を貼って漆の茶色があまり出ないようにした。仕上げは金消粉で。

重ねた漆が少しふっくらと盛り上がって、つい触りたくなる。
これにボンボンショコラをのせたら、どんな印象になるのだろうか。

もう一つの皿は割れが多かったため、少しずれてしまったが、これはこれでいい感じ。
練習台的な感覚で、断面も漆の色がそのまま出るような形にし、比較的安価な銀消粉で仕上げた。

レストランで使ってもらえるか疑問に思いながらも持っていくと、喜んで引き取ってくれた。
普段はゴミとして捨てられていたお皿を持ち帰り、直し、またレストランへ戻る。
我ながら、いい営みだと思う。

先日都内でフレンチレストランへ行った際も金継ぎされたお皿が出てきた。
シェフのお皿への愛は、直してでも使いたいという想いに表れていると思う。
これからもっともっと腕を上げて、そんな「器愛」溢れるシェフたちの大切なお皿を直せるようになれたらと夢見ている。
#漆芸見習記 とは…
「漆・金継ぎ教室」に通い始めた筆者が、金継ぎを習得していく様を記録した連載である。出典がなく書かれている情報はその日先生に教わったこと。引用していることは疑問に思って調べた部分。知識が不十分であるため、言い回しや情報に不備があればぜひコメントでご指摘ください。
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