今年はどんなメンタリティでボンボンを作ろうか…と思いながら材料を集めていた1月中旬。
偶然チューリップの描かれた、素敵なラッピングペーパーを見つけました。ラッピングは中身が決まってから考えるのが常でしたが、「これだ」と思ってしまったのです。
花。いつの間にか、自分の暮らしに必要になっていたもの。
私にとって花を束ねる行為はマインドフルで無心になれる、貴重な時間です。そして飾った花は「ああ綺麗、可愛い」なんて言いながら、眺めては癒され、口角が上がるような存在になります。
そんな「花を束ねる」という行為と「ショコラを作る」という行為を重ね合わせながら一粒ひと粒を制作しました。また素材としても「花」を含む(連想する)ものを合わせることで香りや味わいも華やかなものが多くなっています。
ひと箱(=花束:BOUQUET)として、受け取る方へ想いを込めて。
花言葉が存在するように、それぞれのショコラにも意味を宿らせてみました。
目次
Framboise Rooibos「可憐」
ルビーチョコレート(無着色、無香料であるのにピンク色とベリー感のあるチョコレート)を使ったボンボン。銀粉でキラキラと。
チョコレートそのものに酸味があるのでそれに合うよう、赤い素材としてフランボワーズを合わせています。
フランボワーズピュレとルビーチョコレートのピンク色のガナッシュ。その下にはルイボスティーとラズベリーリーフを香らせたダークチョコレートのガナッシュを合わせ、ラズベリーだけでない奥行きのあるショコラを目指しました。
実は、ピンク色は幼い頃からあまり惹かれる色ではありませんでした。お花を家に飾り始めた頃もナチュラルで落ち着いた色が好きだったのです。ところがお花屋さんに足を運ぶにつれて、花の持つピンク色のグラデーション、可愛らしさにいつの間にか虜になっていました。
花に気づかされたピンクの魅力。
ルビーチョコレートが出回り始めた頃はボンボンを作るなんて思いもしませんでしたが、ピンクを可愛いらしいと思うようになった今、カカオ由来の天然のルビー色に思わず「可憐」という言葉を合わせたくなりました。
Jasmin Abricot「優美」
花をテーマにするなら必ず入れたいと思っていた、ジャスミンとチョコレートの組み合わせ。
その華やかな香りにアプリコットを合わせ、ほのかな酸味とフレッシュ感のある後味に。ジャスミンだけで作るよりも、バランスのとれた一粒になったような気がしています。
その華やかな香りとは変わり、見た目は上品に。
ジャスミンと同じ「優美」という花言葉を持つエディブルフラワーの矢車草(ヤグルマギク、コーンフラワー)を控えめにあしらいました。
花の持つ優美な姿、いつも心を奪われています。
Camomille Caramel「癒し」
カモミールのフローラルで甘い香りにキャラメルのほろ苦さを合わせた、ミルクチョコレートのガナッシュ。
パリッ、とろり、という食感は型を使って作るボンボンショコラだからできること。このひと箱の中で最も柔らかい口当たりのガナッシュに仕上げています。
カモミールミルクティーを飲んでいるような、リラックスできる香りのボンボン。これは特別な飲み物を用意せず、水や白湯だけで召し上がっていただきたい一粒です。
ハーブの魅力は様々ですが、心を整えたり癒されたりする場面が多々あります。それは花を愛でる行為にも重なることで、この粒はそんな「癒し」の一粒になればと作りました。
Noisette Bergamote 「安らぎ」
ヘーゼルナッツプラリネのコクとベルガモットの爽やかな柑橘の香りを合わせたガナッシュ。
二層仕立てにしており、二つが混ざりあった香りというよりはベルガモットを感じたかと思うとヘーゼルナッツを感じる、といった楽しみ方をしていただけるのではないかと思います。
プラリネの口当たりを邪魔しないように、ベルガモットガナッシュの硬さを合わせているのがこだわりポイントです。
6粒の中では甘さの強い一粒。夜、落ち着いた時間にコーヒーや紅茶、ハーブティーなどお好きなお飲み物を用意して、ベルガモットとナッツの「安らぎ」の時間を過ごしていただけたなら。
Thé Citron「深呼吸」
オーガニックアッサムティーを香らせたダークチョコレートの層と栃木県(上三川町)産の無農薬レモンを使ったホワイトチョコレートの層。
レモンは果汁の部分は少量しか加えず、皮の部分を多く使っています。レモン感というよりはハーブ感、フレッシュで少し青々しさもあるような味わいに。
イメージしたのはまだ寒さの残る朝、木々に囲まれ朝日を待ちながら食べるショコラ。
口に入れたら目を瞑り、ぜひ「深呼吸」してみてください。
Fleur de Sel「恵み」
カカオ40%のミルクチョコレート(ジヴァラ・ラクテ:まろやかさとカカオらしさをあわせもち、バニラの香り高さが特徴のチョコレート)を使ったガナッシュ。
ガナッシュの上下にフルール・ド・セル(フランス・ゲランドの大粒の天日塩)を散らしてコーティングしています。
塩キャラメルのような、塩味と甘味の組み合わせ。塩のうまみ、ミネラル感が口に残ります。
先月宮城県(仙台と松島)を訪れる機会があり、普段海なし県に住む私たちは海の幸をたくさんいただきました。
その時に感じた「恵み」。海を見ながら、塩を使ったボンボンを作ろうと決めました。
フランス語のフルール・ド・セルは直訳すれば塩の花。結晶の形から由来する「フルール=花」を今回のテーマに重ね合わせています。
華やか、柔らか、優しさ。そんな味わいが多い一箱だからこそ、この一粒の意味がより際立つようにも思います。
以上、ボンボンショコラ“BOUQUET”の一箱、一粒ひと粒でした。
作ったショコラはほとんど配送にて届ける方の手元へ渡るのですが、実は昨年、少し遠くにお住まいの方に送ったショコラが一つ割れていたということがありました。
それを受け、今回は箱の底と上部に紙のクッションを敷き、紙の仕切りを入れ、ショコラの並べ方も工夫。できるだけプラスティックの包装はしたくないという想いもありながら、住所によって梱包の仕方を変えました。
無事に届くことを祈って。
小さい一粒で幸せな気分になれてしまう、不思議なお菓子に惹かれ、作り始めてなんと今年で10年。
毎回説明書を作っており、そのコレクションも随分増えました。一箱にテーマを添えるようになってからは6年目ですが、毎年その時の自分自身が投影されるようで出来上がったショコラを見ると不思議な気持ちになります。
「花を束ねるようにつくろう」そう決めて制作開始した今年のボンボンショコラ。
この小さな「花のブーケ」を口にすることで、うららかな春が訪れますように。
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