仕事を通じて昨年の夏、100年以上4代にわたって続く老舗の養蜂家を訪れる機会に恵まれた。栃木県鹿沼市に位置する黒田養蜂園。
パーマカルチャー的ライフスタイルを理想にしていた私には、養蜂もトライしてみたいことの一つであり、興味津々で黒田さんの話を聞いたのを覚えている。
ここでは印象的だった話を思い出して綴ることで、蜂蜜を食べる楽しみを共有できたらと願う。
目次
花によって異なる香り
園に着いてすぐ、蜂蜜の味見をしないかと案内された。
アカシア、百花蜜、ミカン、ケンポナシ。それぞれの香りの違いが顕著で楽しい。
県木であるトチノキの蜂蜜は「今年は近くに咲いていた藤の花の蜜も混ざってトチノキらしさが弱いのだけれど…」という。
ヤマザクラについては「今年は全然採れなくて」と話していた。一つ一つのエピソードを聞いているだけで時間を過ごせそうだ。
養蜂家の仕事
4代目社長に案内された先には蜂の巣箱が幾つも並んでいた。
「僕たち人間は多くのはちみつが採れるように準備はします。働き蜂を増やすとか、スズメバチに食べられないように守るとか。でもその先は蜂や天候に左右されるんです。蜂のコンディションがパーフェクトだと思っていても、蜂蜜の収量が少ないこともある。花が咲く頃にちょうど雨が降れば蜜は集められないですし。」
その言葉は養蜂家という仕事の難しさ、同時に面白さを語っているようだ。
蜂蜜を採取する際、蜂自らその蜜を取ろうとすることがあり、その蜂は「盗蜂」と呼ばれるのだという。
しかし黒田さんは「人間が蜂から蜜を奪っているんですけれどね」と笑う。
生きもの、自然を相手にその恵みをいただいているという意識が伝わってくるようだった。
「今年の味」
「今年のはちみつの仕上がりはどうかと聞かれます。お客様の中には良いか、悪いかと聞いてくださる方もいて。でも正直良し悪しでは語ることはできないです。今年の味は今年の味だから。」
今年は今年の味。
一定のクオリティ、味が求められるマスプロダクションと違い、その年の気候や蜂の状態によってその年の味が決まる。
家族で守ってきた養蜂園の蜂蜜を味わう楽しみは、そうした小さな違いを楽しみ、蜂やたちに思いを馳せる行為をも含まれているかもしれない。
(2022年7月6日訪問)
【INFORMATION】
黒田養蜂園
栃木県鹿沼市村井町291-5
kuroda-honey.com
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