花のことば12ヶ月【本棚】

母の誕生日に本をプレゼントしたいと思った。

わざわざ買わないけれど本棚にあったら嬉しい本、自分では見つけられない本、そんな本をプレゼントできたらいいなあ、と想像を膨らませながら。

そこで、とりあえず本屋さんに足を運ぶことにした。どんなジャンルの本を買おうかさえ決めないまま。

インテリアが好きな母。パン作りが好きな母。ガーデニングが好きな母。お裁縫ができる母。お花が好きな母。野菜を育てるようになった母。

母の好きそうな本のジャンルを一通り見て回った。

そこで見つけたのがこの本。

『花のことば12ヶ月』

そういえば、数年前から母は毎週のフラワーアレンジメント教室を楽しんでいる。でも、花一つ一つの物語や歴史を語っているのは見たことがない。だったら花言葉の事典のようなものがあったらよいのでは?

そんな風に本を手にとっていた時に見つけた一冊だった。

まず、装丁が素敵。

これは本を選ぶのにとても大切だと思う。プレゼントなら尚更だ。プレゼントして、たとえ読んでもらえなくても、本棚にちょこんと、インテリアのように置いてもらうのでもよい。そのためには、好きな装丁の本をプレゼントしたい。

深緑にピンクの字、少しざらざらとした厚めの紙に包まれている。その色合いが、なんともいえない素敵な雰囲気を醸し出している。

そして決め手は、「はじめに この本を手に取っていただいた読者の皆様へ」に目を通したとき。直感で、この本は好きだな、と思った。

花そのものが暮らしに色をもたらすことは、母がフラワーアレンジメントを楽しんでいる様子からわかっていたが、「花のことば」もまた、我々人間の暮らしを豊かにするものなのだと、「はじめに」を読んで知った。

実は、母にプレゼントする前に少し読んだ。

読んだあとが残らないように、丁寧に。

この花に、こんなストーリー、神話があったんだ、という驚き。

何より、一つ一つの花に添えられたイラストが、そのストーリーを連想させるもので楽しい。そして美しい。

一つだけ、ちょうどこれから見ごろを迎えるアジサイのストーリーを引用してみようと思う。

花ことばの「辛抱強さ」は、長崎の出島で蘭学を教えたシーボルトの恋物語に由来します。シーボルトは日本人の女性「お滝さん」と恋に落ちましたが、ヨーロッパに帰国するために分かれざるを得なくなりました。彼は、恋人への気持ちを大好きなアジサイの学名に込め、「otaksa(オタクサ)」と命名しました。遠く離れてても辛抱強く恋人を思い続けた姿が花ことばに反映されたのです。

『花のことば12ヶ月』pp.70

この本の帯に「一輪の花がもっと愛おしくなる」と書かれているが、まさに一つ一つのストーリーを読むほどに、その花をただの花ではなくストーリーが加えられた「意味を持つ花」としてとらえるようになると思った。

母もこの本に触れ、アレンジする時に花を見る目が変わるかもしれない。

 Book Info

 2021年3月22日発行

 監修 川崎景介

 編者 山と渓谷社

2021-06-10|タグ:
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