頑張る、その言葉を聞くのがわたしは好きではない。
そもそも頑張るってなに?
『大辞林』先生はこう答える。
「あることを成し遂げようと、困難に耐えて努力することだよ。」
頑張ろう。頑張れる。頑張って。
そうやって前を向き続けていた自分を思い出すと、それがまぶしく見える。
でもその言葉を今の自分に投げかけると、ムズムズしちゃう。
別にいいのに。頑張らなくて。だって生きているだけで最高でしょう。
人間だから頑張っちゃう。人間だから、何かを成し遂げようと、頑張れちゃう。
頑張るってすごい。感動する。頑張る姿を見ると、涙が出てくる。
でも、つらいときは足を止めて、時には後ろを振り返ったっていいでしょう。
そんな時間を過ごす時期があってもいいでしょう。
もしも「頑張る」にルールがあるのだとしたら、それは頑張れる時は頑張って、頑張れない時は頑張らなくていいって思いたい。
だからわたしは頑張らない。頑張ろう、って自分に言うと、涙があふれてしまうから。
別に苦しくなるわけでも、嫌な気持ちになるわけでもないのよ。
ただムズムズするだけ。そしてポロリと自分の目からしずくが落ちる。
だからといって、頑張っているあなたのことを心から応援していないわけではない。
頑張るあなたを見ると、元気になる。
頑張るあなたが、まぶしく見える。
あなたは時々、「頑張ってと声をかけてほしい」とわたしに言う。
わたしの「頑張って」に頑張れるからだと言う。
だからわたしは「頑張って」と言う。
本当はその心の奥そこで、頑張らなくてもいいのよ、なんて思いながら。
「頑張る」を通り越すと、「頑張りすぎる」に到達してしまうことを知っているもの。
そう思いながら、わたしは今日も電話であなたに言う。
「明日も頑張ってね」と。
(2021年4月14日執筆)
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