2020年の振り返り。引用とともに。

2020年はフランス留学から帰ってきて、4月に久しぶりにブログを編集し、それからQuote of the month として引用を載せてきた。途中9月から11月は全く引用を更新しなかったから計7つ。

2020年も残りわずか、今回は、今までに載せた引用をその月に感じたことと一緒に紹介してみたい。月々の感じたことは、その月の終わりに書いて、下書きしていたもの。少し読みにくい文章もあるけれど、あえてそのまま公開しちゃおう。

avril ―4月

Aucune grâce extérieure n’est complète si la beauté intérieure ne la vivifie. La beauté de l’âme se répand comme une lumière mystérieuse sur la beauté du corps.

外見がいくら優雅であっても、内面の美しさが生き生きとしていなければそれは完全な美しさではない。魂の美しさこそが、体の美しさを神秘的な光で照らしているのだから。

Victor Huro (1802-1885)

4月。COVID-19の感染拡大を受けて私が留学していたフランスを含め、世界中で外出禁止令、またはそれ相応の処置がとられる中で、日本でも「緊急事態宣言」による外出自粛要請が出た。

学生の私たちにとってはオンライン授業が始まり、単純計算で通学時間が削られたわけで、少なくとも私はそれまでより多くの時間を読書に費やし、その他、もともと好きだった写真や絵といった、アートに向き合う時間も多くなっていった。

そこには何となく自分の中で、感性を高めたいとか、自分を磨きたいとか、そういう欲求もあって、「外見ではない美しさを持ちたい」と思っていた時に見つけたヴィクトル・ユーゴの言葉が、ストンと自分の中に落ち着いたのだった。

WIRED日本版編集長の松島倫明さんとTakramの渡邉康太郎さんがTwitter liveで、FUTURES LITERACY特集で「誤読学」について話されていた時、渡邉さんが「名前のない時間こそ美しさはある」と言っていたのが心に残っている。本を読んで、自分なりの解釈をして、その物語を完成させていく。そんな時間、これからも大切にしていきたいと思った。

beauté(ボーテ、美しさ)。改めて、その意味を考えさせられる4月だった。

3月末まで留学していたフランスはリヨンの風景。

mai ―5月

…最後まで行き着けないとわかっているとしても、しかるべき道を進み、試していかなければなりません。…目的地はどことも定めることなく、いかなければなりません。なぜなら、私たちに適切と思える道に進む以外に、目的地はないのです。…

“SEMEUR D’ESPOIRS” Pierre Rabhi / ピエール・ラビ『希望を蒔く人‐アグロエコロジーへの誘い‐』天羽みどり訳(2017)コモンズ。

5月。農家さんのゴールデンウイークは大忙し。田んぼには水が張り、田植えが始まる。それと同時に田んぼの中の生きものたちの声も聞こえるようになって、特にカエルの歌は一日中聞こえてくる。

この月の引用は4月に出会った一冊、ピエール・ラビさん著、天羽みどりさん訳の『希望を蒔く人‐アグロエコロジーへの誘い‐』より。アグロエコロジーの先駆者として知られる農民作家・思想家のピエールさんによるこの本は、彼の人生、生き方、そして政治や社会に向けてのまなざしが書かれている。

アグロエコロジーを学ぶ中で、実践者としてピエールさんがどんな考えで農と向き合っているのかという思想を知れば知るほど、彼が愛にあふれているのだということを感じる。

ピエールさんの講演会の様子などを観るたびに、フランス語をやっていてよかったと実感するのも、言語習得に時間をかける者としては嬉しい瞬間でもあった。

この時期のジュンベリー。ぷっくりしてきてる。

juin ―6月

Sometimes to lose balance for love is part of living a balanced life.

恋のために自分のバランスを崩すのは、バランスのとれた人生を送るのに必要なことなんだよ。

American movie “Eat Pray Love”  released in 2010, directed by Ryan Murphy

6月。雨の日の午後、薄暗い部屋の中で電気を消したまま、窓を少し開けて、窓際に椅子を置いて、雨の音楽を聴きながら静かに本を読むのが好き。

引用は、留学してすぐにNetflixで見つけた映画、『Eat, Pray, Love』の中で出会った言葉。勉強や丁寧な暮らしに取り組もうとする中で、時々邪魔してくる恋というものに心がうずうずする時、思い出すのがこの言葉である。

シンプルだけど、ちょっと救われる一言。恋をするというのは時に甘く、時に苦しい。そんなことにいちいち振り回されるのはあとから振り返ると馬鹿馬鹿しいと思うこともあるけれど、でも人間ってそういうものだよね、そんな経験も必要よね、というマインドにしてくれる。

実はこの月は、恋に悩まされていて、心が「痛い」と表現したくなるようなことも…。それでもどうにか立ち上がろうと、いつもより長く瞑想をしたり、自分の気持ちと向き合ったりするうちにいつの間にか前を向くことができた。悩まされて、時には泣くことしかできないかもしれないけれど、自分の感情を受け入れてその上で目の前の状況に向き合うことが、きっと辛いことから抜け出す道なのではないかと、痛む心と向き合いながら思ったのだった。

恋だけではなくて、どんなことであっても、落ち込んで、ネガティブになって…そうやってバランスを崩すことも人生には大切なのだと思えば、自然と自分が肯定できるような気がしている。

夢中になって蜜を吸う。

juillet ―7月

一つの立場から見たものは、本物でないということを各自が知り合わないと、本当の、一つの話にはならない、と私は思います。

福岡正信(1983)『自然農法 わら一本の革命』春秋社。

7月。例年より梅雨明けが長引き、作物が上手く実らなかったという話を何度か耳にした。世界を見ると、干ばつの被害が深刻な地域もあれば、雨が多くて悩まされる地域もある。そのバランスがどうにか取れないものだろうか、と心を痛めながら、そのバランスを崩しているのが人間だと思うと、余計に心が痛む。

もう、人間中心主義的な考え方は通用しないのだろう。自然が自然でなくなりかけている今、私たちは目を見開いてその現実を受け止め、行動に移さなければならないのではないだろうか。人間は自然の中で生きているからこそ、人間らしく生きていられる。そんな風に考えると、自然と人間を切り離した社会は、どんな未来があるのだろうかと不安な気持ちになる。でも不安になっているだけでは何も起きない。そこからどう働きかけられるのかを思考していかねばならない。

この月は誕生日を迎えた月でもあった。世界、社会で起こる、様々な物事からたくさんのことを考えながら迎えた22歳の誕生日は、今まで以上に未来を思考するきっかけにもなった。

時々「何のために生きているのだろうか」と自分自身に問いかけ、苦しくなることもある一方で、未来を考えることは前を向き、足元を見、「生きる」ことを考えさせてくれるのだと改めて感じる。誕生日は、それまでの自分を振り返ると共に、未来を考え、今のいのちに感謝する、そんな日なのかもしれない。

あっという間に過ぎてしまった7月は、あわただしく、時につらく、時に楽しく、そして再び前を向かせてくれる、私にとってはそんな月だった。

木漏れ日は、いつ見ても美しい。

août ―8月

―黙々と働き、割り終わった薪が小屋の中に積み上がってくると、ただただ幸福感に満たされる。自分は単純な生き物だと思い、またその単純な幸せがありがたいと感じる。

畑口JAN「マインドフルネス」『住む。』季刊夏74、pp.70

のんびりとコーヒー片手に雑誌を開いていたら、ふと目にとまったこの一節。料理をしたり、裁縫をしたり、文字を書いたり。手を使って何かを生みだすことが好きな私は、やけに共感してならなかった。

はたから見たら「なんでそんなに楽しそうにしているの」と言われてしまいそうなことでも、自分の中にはちゃんと意味があって、それが嬉しく、幸せなことだったりする。未曽有な時代だからこそ、自分の幸福感を大切に、どんな暮らしをするのか、ということを考えたいものである。

さて、8月は梅雨明けから始まり、急激に暑い日が続いた。大学は学期末で大詰めに入り、テストやレポート課題が立て込む中、私は単位を落とすことを覚悟しながら神奈川は藤野のPCCJで開催された「パーマカルチャーデザインコース」へ参加した。それは、修了するとパーマカルチャーデザイナーという肩書がもらえるもので、朝から夜まで授業やワークショップ等が詰まった9泊10日、最高に「密」な時間だった。

内容は「パーマカルチャーとは」という哲学的・倫理的な側面から始まり、自然・森・土・水といった一つひとつの地球のエレメントについて、そしてデザイナーや生物学者、建築士といった最前線で働く方々の講義など、範囲は多岐にわたった。参加者の距離は日を追うごとに近くなり、講義はもとよりバックグラウンドが異なる参加者の方々から受け取るものも多く、人生の中でこんなに濃い時間を過ごすことがあるのだろうかと、半ば夢見心地のまま終わってしまった10日間であった。永続可能性についてたくさん考える機会になったのはもちろん、「循環」の意味や未来の思考の方法、そんなものをも受けとり、また一歩自分の中で目の前の可能性が広がったようなそんな感覚にもなった。

繰り返すが、我々は未曽有の時代に生きている。人間として、どう生きるべきか、わからなくなることも多いと思う。パーマカルチャーは森を師とし、人間として自然に働きかける方法を教えてくれる。地球をはじめとして、人、文化の永続性を考える人にとって必須科目だと思われるパーマカルチャーに、22歳のうちに触れることができてよかったと、8月を振り返る。

夏生まれだからか、ひまわりは心をぱあっと明るくしてくれる存在。

septembre / octobre / novembre ―9・10・11月

9・10・11月は、実は一度も引用を更新せず…8月のままにしてしまった。なのでこの時期によく歌っていた曲があるのでそれをここに載せておく。映画『The Greatest Showman』より、「A Million Dreams」の歌詞の一部。

They can say, they can say it all sounds crazy
They can say, they can say I've lost my mind 
I don't care, I don't care, so call me crazy 
We can live in a world that we design 
'Cause every night I lie in bed
The brightest colors fill my head 
A million dreams are keeping me awake 
I think of what the world could be 
A vision of the one I see 
A million dreams is all it's gonna take 
Our million dreams for the world we're gonna make

人は馬鹿だと言うだろうし
誰かは僕が頭がおかしくなったんじゃないかと言うだろう
でも僕は気にしないからクレイジーって呼ばれたっていい
僕らは自分たちで描く世界に生きることができるんだよ

毎晩ベッドに横になる時
僕の頭の中は鮮やかな色でいっぱいになる
数えきれないほどの夢が僕を眠らせてくれない
僕は理想の世界を想像する
そして無数の夢がその世界を実現するんだ
無数の夢は世界をつくるために存在しているんだよ

この曲を夜、目を閉じて「世界」を想像しながら歌うと、いつの間にか涙が出てる。そして、前を向いて、ポジティブな気持ちになっている。そんな曲。

夢を語ると、何を言っているのだと嘲笑されることは少なくない。理解されないことがほとんどってこともあると思う。でも、誰かにとっては笑ってしまうような、クレイジーと言われてしまうような、そんなことでも自分の中ではキラキラと輝いている。多分、それでいいのだと思う。だって自分の中で輝いているということは、ストーリーがあって、愛があって、もうそれだけで意味のあることだと思うから。

それを、もし、ほんの一握りの人が綺麗な世界だと思ってくれたら嬉しい。きっとこの世界のどこかには「美しい」って言ってくれる人がいるかもしれない。そのくらいのモチベーションでいいんだと思う。

大学には立派なイチョウの木が並んでいる。

décembre ―12月

茨木のり子『倚りかからず』ちくま文書「行方不明の時間」より一部抜粋。

人間には
行方不明の時間が必要です
なぜかはわからないけれど
そんなふうに囁くものがあるのです
三十分であれ 一時間であれ
ポワンと一人
なにものからも離れて
うたたねにしろ
瞑想にしろ
不埒なことをいたすにしろ
遠野物語の寒戸の婆のような
ながい不明は困るけれど
ふっと自分の存在を掻き消す時間は必要です

12月。ああ、もう今年は今月で最後なのか、と思いながら迎えた、そんな月。

どうにもこうにも、うまくいくことも、うまくいかないことも。

たくさんのことに向き合い、たくさんのことを考え、たくさんの人に支えられ、たくさんの愛に触れた1年だったと振り返る。

そして12月半ばには、ここ半年の時間の多くを占めた卒業論文の提出があった。自信をもって、やりきった、なんて言えないけれど、それでも初めての論文をはじめてなりに乗り切ったとは感じている。

途中から「自己満足のために」と割り切り、そこからは気を張らず、でも自分の納得のいくように、と思いながら書き進めていった。だれかに認められるのは嬉しいけれど、「認めてもらうために書く」のはしんどすぎる。「自分の興味や疑問に忠実になる方が楽しい」と気づいてからは、肩の荷が下りたように、論文に向き合う時間がいとおしくも思えた。

論文を書かなかったら出会わなかった人や、出会わなかった考え、そんなものに触れることができただけでも有意義だったと思う。そして、先生や仲間、インタビューに協力してくださった方や図書館でサポートしてくださった方…すべての方に感謝の気持ちを伝えたい。

12月も残りわずか。2020年というこの、目まぐるしかった一年に、お世話になったすべての人、一人ひとりの顔を思い浮かべながら、そして感謝の気持ちを想いながら、この1年を締めくくりたい。

いつかのどこかで撮った、なんだか寒そうな雰囲気の写真。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

みなさんは、どんな1年でしたか。

「未来が過去を変える」

そう思っている私は、未来の自分が、今の自分がどう見るのだろうか、なんて想像しながら、その自分に恥じないように、毎日を一生懸命に生きたいと思って生活しています。

来年もきっと、良い一年になるはず。

良い一年になるように、毎日感謝の気持ちや、生きる喜び、この地球の美しさを感じながら、「意識」に意識しながら、これからも生きていたいと、そんな風に思います。

(Thumbnail photo by Drew Coffman on Unsplash)

2020-12-31|
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