ペアのマグカップをまた二人で使えるようにする【漆芸見習記 #6】
更新頻度が1か月に一度になっているブログ。
メールマガジンはそれよりも更新頻度が落ちているが、それでも感想をいただいたり、それをきっかけに連絡が取れたりと、嬉しいことがあるから細々と続けている。
6月も終わりの頃、メールマガジンで「壊れてしまって捨てられない器があれば連絡待ってます」と記載すると、早速連絡をくれた友人がいた。
3年近く会っていなかったが、壊れた器をきっかけに話す機会が持てた。その繋がりを、尊く思った。
今回は、そんな友人から預かったマグカップのお話。
タイの思い出
彼のマダムはタイで働いていたことがある。預かったマグカップは、その期間に求めたものだそうだ。
手作りだから一つ一つ表情が違くて、二人で気に入って使っていたという。
ゾウが形取られた取手、土のゴツゴツとした表情。よく見ると確かに「タイ」の雰囲気を感じる。
割ってしまいひどく後悔したが「金継ぎすればいいよ」と半年以上保管しておいたそうだ。
欠けた破片も綺麗に残っているところから、大切に取っておいた様子が想像できた。
マグカップの形にもどす
欠けているだけのように見える器は、よく見るとヒビも入っている。
ヒビを直しつつ、割れたところをくっつけ、最後に欠けてパーツがない部分を埋めていった。
割れた(欠けた)断面に漆を薄く塗る。割れた部分には染み込ませる。
麦漆で割れた部分をくっつけ、硬化。
余計な部分をカッターで削り、破片のなくなっている部分は錆漆で埋めていく。
錆漆も硬化したらトクサを使って研ぐ。
ここまできたら、あとは丁寧に塗り重ねていくのみ。
何度か塗り重ね、いよいよ仕上げのみという段階まできた頃、どんなイメージで仕上げてほしいか依頼者に聞いてみることにした。
器の茶や黒に合わせて漆を塗るか、あるいは金を蒔いてその「割れ」を際立たせるか。
私が繕ったということ、そして友人が割ったことを忘れないように、金を蒔いて欲しいと、マダム直々に連絡があった。
そして、仕上がり。
ペアのマグカップを、また二人で使えるようにする。
二人で使う様子を想像しながら繕う行為は、なんとも幸せな時間であった。
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