あの日あの時、あの場所で… 出会いって本当に面白い。

出会いって不思議だなあ、ってふとした時に思う。

特に、旅をしている時。その場所にいること自体が奇跡みたいなことなのに、そこでこんなに素敵な人と出会うなんて、って思うことは少なくはない。

私の2倍は生きている友人が、こんなことを言っていたのを覚えている。

「私が生きてきて、たくさんのことを見て、いろいろなことを経験したけれど、一番よくわからなくて、でもだからこそ面白いのは、出会いなんだよね。」

私はまだ20数年しか生きていないから、出会いというものがまだよくわからないけれど、確かに今まで旅先で出会った人や、友人との出会いを振り返っても出会いって面白いと感じさせられる。

カナダで出会ってずっと連絡を取り合っているフランス人の姉妹。タイのホステルで出会った言語習得がとにかく得意な台湾人の学生。カナダでホームステイして時々会いに行きたいと思ってしまうような家族。イスタンブール空港で出会ってフランスの留学先が一緒だった中国人の親友。

電車で隣に座って、南アフリカへの旅行の話をしてくれたおばあちゃん。日本に帰国する飛行機で隣に座った話のあう学生。カフェで知り合って時々話すようになった人生の大先輩。

まだまだあるけど、これ全部、出会った瞬間を覚えているし、彼らと過ごした時間が鮮明に自分の中に残っている。その一つ一つが、かけがえのない時間で、この人と出会わなければよかった、というものはない。あまりいい思い出がない出会いも、怖い思いをした出会いも、もちろんあったけれど、そんなことからでも学ぶことがあったと振り返る。だから無駄な出会いがあったって、私には言えない。

都会になればなるほど、電車に乗っても隣にいる人と挨拶もしなければ、会釈だって、会話なんてよっぽどのことがなければしない。でもその時間、その車両に、しかも隣に座っているこの人とは「出会い」なのでは?と思った瞬間、なんだかワクワクしてくるのは私だけだろうか。(日本ではむやみやたらに声をかけられないけれど…)

そういう小さい出会いが、きっと面白い出会いにつながっているのかもしれない、なんて思ったりもして。

その小さい出会いで、心から出会えてよかったと思える人に出会った。これはその時のエピソード。今年の1月だったっけ。

フランス、リヨンに留学していた私は、午後4時頃、月に3回行っていたコインランドリーに洗濯をしに行った。いつもの通り、中くらいのサイズの洗濯機に洗濯物を詰め込み、いつもの通り本を開く。シンとしている。誰も入ってこない。その日は空いていた。

ちょうど私の洗濯機が残り5分くらいになったころ、小柄な女性が入ってきた。私よりちょっと歳は上な感じがする。Bonjour(こんにちは)と、声をかける。キョロキョロしているから、はじめてなのかな、と思っていたら

「私はじめてなの。使い方教えてくれるかしら。」

と声をかけてくれた。

「もちろん!」

と答えて、流暢には程遠いフランス語で説明する。アジア人顔の私に、抵抗なく話しかけてくれてしかも頼ってくれて、なんだか嬉しかった。

「洗濯洗剤持ってきた?」

と聞くと、持ってきていないようだ。

「ここで買うと一袋1ユーロもするし、私のでよければ使う?一応99%ナチュラルな材料で、天然のラベンダーの香りだから肌には悪くないやつだと思うんだけど…。匂いかいで嫌いじゃなかったらこれ使ってよ。」

と言うと、驚いたように

「ええ、本当に?いいの?」と。

そこから、私は洗濯機から乾燥機に洗濯物を移して、乾燥が終わるまで、20分くらい話した。

彼女は10年前にベナンからフランスに来たということを聞いて、私がトーゴに行ったことがあると言うと、私のお母さんはトーゴ出身なの!と二人の距離は一気に近づいた。その他にも、私の留学話や彼女の仕事の話、趣味の話まで、話が弾んだ。

今度はどこで会えるかしらね、と言いながら、帰り際にせっかくだからインスタグラムでも交換しよう、となった。

心理学者でありながら、アーティストとして活動を始めたばかりだという彼女。愛にあふれた人なのだということは、少し話しただけで感じていた。

家に帰って、交換した彼女のインスタグラムを見て驚いた。素敵という言葉だけでは言い表せないほど、素敵な作品をつくるアーティストだった。彼女もまた私の写真やお菓子をみて、感動してくれた。

祖母が絵を描くからか、色が好きな私は、彼女の色使いに惚れてしまった。パリで個展を開くことが夢だと語っていた彼女は募金を募っていて、私は迷うことなく心ばかりの支援を送った。

それから、パンデミックの影響を受けて私は帰国することになり、バタバタしていてパリの個展には行けなかったけれど、夢が叶ったようで、私はそれだけでハッピーな気持ちになった。その気持ちを味わえたのも、コインランドリーが始まりだと思うと、偶然の出会いへの感謝の気持ちがこみあげてくる。

帰国してしばらくして、彼女から一枚のポストカードが届いた。それはそれは美しい、彼女の作品の一つ。ただただ嬉しかった。今は壁にかけて毎日元気をもらっている。

いままでたくさんの出会いがあったけれど、このコインランドリーでの出来事もまた、忘れられない出会いとなった。いつかまた彼女とおしゃべりできる日を楽しみにしながら、今はひっそりと彼女の活動を応援している。

2020-07-29|タグ:
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