【プレ開催の記録 #1】春を楽しむ時間

まいと武さんが、小学校の給食を考える栄養士さんとやり取りする中で考えられた、中学生のための食育活動。

その栄養士さんは6年前から、学校の花壇を菜園にし、学校周辺でも畑を持つという取り組みを、農福連携に取り組む埼玉復興株式会社の協力を得て開始した。今は米も作るようになり、それを学校給食で出す、ということが実現している。これからは大豆を栽培し、味噌や豆腐を作ってそれを給食で使うことを目指していると話していた。

その栄養士さんのもとで「食育クラブ」なるものが小学校に存在し、その先生のもとで食に触れてきた小学生たちはこの3月に6年生を終え、中学校に入る。小学校の延長線上として中学生に向けて食育をしたい、という武さんの想いを受け、また学校ではなく家でもない「居場所」を作りたいという、まいの想いを組み合わせて、この食育コミュニティ(仮称)は春休み中のプレ開催を迎えた。

全3回のプレ開催の1回目は、2021年3月27日に行われた。日曜日の昼下がり、13時から16時まで、3時間にわたって開催されたその取り組みは、春の温かな陽気に包まれながら、笑顔あふれる時間だったと振り返る。

初めての開催で、どんな雰囲気でできるのか、何もわからなかった私たちは、プロのパティシエである武さんのクレープ講座をする以外は、特にやることを決めずにスタートした。決まっていたのは、参加する2人の子どもたちが楽しく過ごせる場所にすること、心を開いて、こんな居心地の良い場所があるのだ、ということを感じ取ってもらうことくらいだった。

スタートしてすぐ、一人の子が「お腹すいた!」と一言。朝9時から12時までバレエのレッスンに行っていて、お昼ご飯を食べていないというのだ。

それを受けて、「じゃあなにか作ろうか」ということになった。パスタならすぐにできるし、ちょうどブロッコリーがある。お昼を作るなんて予期していなかったが、料理好きの彼女たちの要望に応えたいという想いがあった。

パスタを作ろう、となった時、私(ゆり)はふと、厨房に全員が集まるのは窮屈だよな、と感じた。そして、一人を連れて外に出よう、と思い立ったのだった。

食材は冷蔵庫の中から出てくるのではなく、スーパーマーケットから買ってくるのではなく、土、水、地球の恵みの産物だ、ということを感じ取ってほしい。それは外に出れば感じてもらえると思った。

はじめはガーデンのハーブの香りを一つ一つ嗅いで、好きな匂い、あまり得意でない匂い、というのを嗅ぎ分けていった。そして、パスタにするなら菜の花を入れたらいいのでは?ということになり、菜の花がたくさん咲いているところから柔らかそうな部分を摘んでいった。

子どもたちは、まさかこの時期にたくさん見る「黄色いお花」を摘んで食べるなんて、想像もしていなかった、というように、初めは驚いた顔をしていたが、私がこういう部分を摘んだらいいんじゃないかな?と見せると、積極的に、楽しそうに菜の花を摘むようになる。

私が、「こういうのも天ぷらにして食べられるんだよ」とカラスノエンドウを指すと、「きれいな紫!これを摘んでデザートの飾り付けに使いたい!」と、率先して野草を摘んでいった。

雑草を食べるの?という懐疑的な目は、いつの間にか「きれいで美しいもの」「私たちの身近な鮮やかなもの」という捉え方になり、通り過ぎるだけの野花たちが、グンと子どもたちの近くになったのではないかと、彼女たちの様子から伺えた。

そうして無事にパスタが完成し、皆で手を合わせる。

この食育コミュニティの「大人」メンバーは、まい、ゆり、そして武さん。その3人は全員、ヨーロッパでの滞在経験がある。まいは高校生のころにベルギーへ、ゆりは大学生の時にフランスへ、そして武さんはパティシエになって少し経った頃に同じくフランスへ。

それらの場所で得たことを、子どもたちに「物語る」ことも、私たちの特徴だと認識しているから、武さんはキリスト教の話、食べるときのお祈りの話を、パスタを食べながらしてくれた。

食べ終わり、片付けも終え、いよいよクレープづくりへと移ってゆく。

まず、武さんのクレープづくりのデモンストレーションがあった。武さんはプロの仕事はこういうものだよ、というように、無駄のない所作でクレープを作る。思わず見とれる子どもたち。

それを見て、できるかな、とドキドキしながら、一人一人自分のクレープを焼いていった。盛り付けにもひと工夫、武さんは乾燥させた菜の花の花びらをパラパラと散らし、そこに粉砂糖をふりかけた。

家では「一つのお皿を綺麗に盛り付ける」という体験は滅多にないのだろう。彼女たちの目を丸くした、あの顔は印象的だった。花をお皿にのせるということが衝撃だったのか、自分たちのお皿には粉砂糖といちごしかのせていなかったが。(笑)

私は彼女たちが盛り付けに使いたいと摘んできたホトケノザの花びらを、菜の花と一緒に散らした。(写真下)

そうして出来上がったクレープを、ハーブティーと一緒にいただいた。ハーブティーは埼玉復興で育てているオリーブの葉を加えられたALL MY TEAのもので、3種類の香りを嗅ぎ、その中から飲みたいものを選んで淹れた。

フランス滞在時はこれでもか、というくらいたくさん飲んだハーブティーであったが、日本だとその文化は弱い。その点、ハーブティーの飲み比べも、彼女たちにとっては初めての試みだったと思われる。

あっという間に過ぎさった3時間を終えて、参加した二人は、楽しかった、また来るのが楽しみだ、と言って去っていった。それを聞いて何より、過ごした時間の豊かさを思った。

まだまだ駆け出しの身、私たちの試みは試行錯誤しながら進んでいくことだろう。思い通りにいかないことも多いと思う。その中でも、「素敵」な空間を創り出すことだけは心に留めて、残りの2回のプレ開催、そして続いていくこの場を、育てていきたいと思っているところである。

 ABOUT THIS COLUMN

 埼玉県の小さなおうちで開催している、まいとゆりの活動の記録。#Sunday Abroad

 登場人物は「まい」、「私(ゆり)」、そして参加する子どもたち。時々、おうちの用務員(兼持ち主)である「武さん」も。

2021-03-30|タグ:
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