2020年「小川町隣人祭り」レポート

有機農業が日本で言われるようになったその頃から、1971年から、ずっと循環型の有機農業に向き合って来た人。それが金子美登さん。有機農業についての本を読んだら必ずといっていいほど取り上げられている、そんな人。

その金子さんの農場のある下里で、11月3日、「小川町隣人祭り」が開催された。会場は農場の隣の旧・下里分校校庭にて。

「隣人祭り」はフランスではじまって、全国に広まったお祭りなのだそう。フランス語だとLa Fête des Voisins(ラ・フェット・デ・ヴォワザン)かな。

金子さんの奥様、友子さんにはお会いしたことがあったけれど、私自身霜里農場にいくのも初めてで、本で読んでいた、憧れの場所を訪れるというだけで胸が高鳴っていた。

隣人祭には焼き芋屋さんやたこ焼き屋さん、お野菜とお味噌汁屋さん、コーヒー屋さんなどが軒を連ね、小さなステージが設けられていた。赤と、白と、青の、フランスのトリコロールを思わせる3色で飾られたその空間は、竹の爽やかさも加わって居心地の良い空間をつくり出していた。

まず11時半くらいに着いた私は、友子さんに「見ておいた方がいいよ」と言われるままに、「あうんユニット」やらを見に行った。

あうんユニットは、簡単に言えば人間の糞尿を微生物の力で発酵させ、様々なことに使える酵素水にしてしまう装置のこと。環境微生物学の専門家、高嶋康豪博士(1951年-)の複合発酵理論に基づいて考えられたものだそう。

説明してくれたけいさんは、何百倍かに薄めて飲むようになって腸の調子がすこぶる良くなったという。究極の腸活にもなるということだ。何万という微生物が活性化しているこの酵素水は「エナジー水」と呼ばれ、農に使って土壌菌を活性化させたり、家畜に飲ませたり、環境浄化に使ったりと、あらゆる使い道となる。

養豚場を営む柳田さんは、この水を作り、使うようになってから畜産独特の匂いが消え、豚の質が格段と上がったという。それは全て微生物の力であるから驚くべきである。

自然界にいる微生物を生かすということ、それを軸に考えられたのがこの糞尿の複合発酵によるエナジー水製造装置なのだ。1時間近く説明を聞きながら、終始微生物や発酵の面白さを思いながら心が躍っていた私だった。

12時半をすぎた頃、ゲストによるトークショーが1時間半くらい行われた。これはもう、憧れの人たちが集まっていて、楽しみにしていたものだった。だって、あのスローフードという言葉を日本に持ち込んだノンフィクション作家の島村菜津さんと、数々の本を出版していて特にキューバの研究で名を馳せる吉田太郎さん、そして金子美登さんという組み合わせだもの。

友子さんが「菜津さんは性格美人」と言っていたけれど、明るくて、キラキラしていて、強くて、本当に美しい人だと思った。この人の本をもっと読みたい、追いかけたい、と素直に思った。そういう素敵な大人に出会えた私は、幸せ者だな。

冒頭に島村さんが、「NOといって勝った運動はないからね」と言っていた。本当にそうだと思う。単純に「これがだめ、あれがだめ」というよりも、「これがいい、この方が素敵」というように進んでいった方が、明るいし、たくさんの人が寄ってくる。そう、だから反対ばかりしていても運動は進んでいかないのだろう。前を向いて、よいと思うものを信じて、それを実践し、伝える。それが一番だと思うし、そういう姿勢でいたいと思う。

その点、こういう場所、ワクワクして、それでいて根っこに深く意味を持っているイベントとかが大切なんじゃないかと、一日を振り返って感じている。

私も自分の地元で隣人祭り、開催したいな。

2020-11-03|
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